代表理事
園部まり子・長岡徹

顧問
西間三馨先生
(国立病院機構福岡病院名誉院長)

講演セミナー • その他お知らせ

アレルギーの適切な治療を学べる講演会などの情報を紹介し患者さんのQOL向上に努めています。

■ファイザー社がトレーナー1万2,000本を総務省消防庁に寄贈

配布された「エピペン」トレーナー

配布された「エピペン」トレーナー

ファイザー社は3月9日(木)、同社が販売しているアドレナリン自己注射薬「エピペン」の練習用トレーナー1万2,000本を全国の消防本部に寄贈したと発表しました。これにより「エピペン」を業務として打つことができる救急救命士が日常的にトレーナーに触れて練習することが可能になり、食物アレルギーによるアナフィラキシーやショックなどへの対応がより確実になることが期待されています。救急救命士による「エピペン」投与は平成21年3月から可能になり、心肺が停止する前の人に対する救急救命士による薬剤投与として画期的な出来事となりました。
その際、総務省消防庁は「エピペン」の実物を全ての救急救命士に練習用に配布して備えましたが、「エピペン」が現在の剤形に変更されてからは、新剤形のトレーナー配布などの対応はなされていませんでした。

■「母の会」、現場の救急救命士の声を受けて総務省消防庁に配布を要

「母の会」には神奈川県内などで研修会を行うたびに、参加した救急救命士から「こうした研修会でしかトレーナーに触れることができない」「どこかで入手できないか」などの相談が寄せられていました。「母の会」はファイザー社の対応を確認した上で、昨年9月21日(水)、発言の機会を得た公明党アレルギー疾患対策プロジェクト・厚生労働部会合同会議の席上、出席を要請した総務省消防庁の消防・救急課長、同救急企画室長に現場の救急救命士の声を伝え、「『エピペン』トレーナーを全ての救急救命士に配布していただきたい」と要望(当会HPに要望全文を掲載)、消防庁とファイザー社の橋渡しも行いました。こうした患者や現場の救急救命士の声を受けて素早く対応していただいた消防庁、ファイザー社に感謝したいと思います。
総務省消防庁が平成28年12月に公表した平成28年版「救急救助の現況」によると、全国の救急救命士は3万4,223人、そのうち2万4,973人が現場の救急隊員として活動しています。また全国5.090救急隊のうち5,008隊で救急救命士が活動しています(平成28年4月1日現在)。1万2,000本の「エピペン」トレーナーが配布されたことで、1隊に2本、現場で活動している救急救命士2人に1本の「トレーナー」が配布されたことになります。。

■常時、救命士が乗務する救急隊は神奈川県、鳥取県で100%、徳島県では62%

「母の会」も協力した講演会で行った救急救命士による「エピペン」使用のシミュレーション(平成27年3月)

「母の会」も協力した講演会で行った救急救命士による「エピペン」使用のシミュレーション(平成27年3月)

同じ平成28年版「救急救助の現況」によると、常時、救急救命士が乗務している救急隊の割合は神奈川県、鳥取県で100%である半面、徳島県で62.2%、島根県では63.2%にとどまるなど、全国でばらつきがあることが分かっています。年を追ってその率は向上しているものの、常時すべての救急車に救急救命士が乗務するようになるまでにはまだ時間がかかりそうです。
学校や保育所でアナフィラキシーを発症した時、まず本人やその場に居合わせた人が打つことが期待されますが、対応をより確実にするため、「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(平成20年3月)を受けて学校と救急隊の事前の連携を促す通知(平成21年7月)、「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(平成23年3月)を受けて「保育所と救急隊の事前の連携を促す通知」(平成23年10月)が文部科学省、厚生労働省、総務省消防庁から出されています。重篤なアナフィラキシーを発症した時の対応を確実にするため、全国の自治体で通知に基づいた対応が急がれています。
(長岡徹)

ファイザー社の発表はこちら  平成28年版「救急救助の現況」はこちら