代表理事
園部まり子・長岡徹

顧問
西間三馨先生
(国立病院機構福岡病院名誉院長)

講演会 • 学会発表報告

講演会•学芸発表報告の説明

■コメディカルが多く参加するユニークな学会

大阪府立呼吸器・アレルギー医療センターの亀田誠先生が会長を努める第29回日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会が6月16、17日の両日、大阪市の新梅田研修センターで開かれました。多くの学会では参加者の大半を医師が占めるのが普通ですが、この難治喘息・アレルギー疾患学会は、医師よりも多くの看護師などコメディカル(医師以外の医療専門職)の方たちが参加し、チーム医療を担うそれぞれの立場から発表するなど研鑽を深める機会になっています。

会場の新梅田研修センターで一緒に参加した皆さんと

会場の新梅田研修センターで一緒に参加した皆さんと

「母の会」も亀田会長からお招きいただき、大会第1日の「学校関係者による学校関係者のためのシンポジウム」で貴重な発表の機会をいただきました。このシンポジウムは、学校におけるアレルギー疾患の子どもの支援の在り方について、学校にかかわる方がそれぞれの立場で報告する内容で、「母の会」のほかに、「学校におけるアレルギー疾患のある子どもの支援の在り方について」白樫麻紀先生(大阪府立羽曳野支援学校)、「学校におけるアレルギー疾患への対応~八尾市学校保健会の取り組みを中心に~」木村三郎先生(医療法人木村小児科)、「小児慢性疾患患者が大人になること:成人移行期の提案」丸光惠先生(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)、「松本市における学校給食の食物アレルギー対応について」今野美穂先生(松本市教育委員会学校給食課、東部学校給食センター)が発表をされました。

■学校で研修を行う必要性を訴え

「子どもたちを支える学校全体の理解と地域の連携を願って」と題して発表した「母の会」代表の園部は、会の活動が、学校や保育園などでアレルギーの子どもたちが安心して過ごせるための支援をどう実現するかが大きなテーマとなっていることを踏まえ、学校での支援を促す「母の会」のこれまでの「研修」の試みと、関係者の〝連携〟で支える大阪狭山市の取り組みを報告しました。

「母の会」の取り組みを報告する園部

「母の会」の取り組みを報告する園部

その中で園部は、「研修」を必要とする背景について、多くのアレルギーの子どもたちが学校での支援を必要としているにもかかわらず十分な支援を受けられていない実態があること、学校での取り組みついては、平成20年3月に文部科学省が監修した「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」が示されているものの学校関係者の理解が十分ではなく取り組みが遅れていること、半面、教職員などはアレルギーの病態や対応の理解を深める研修の受講に高い関心を示しているアンケート結果などを示し、各地でアレルギー専門医がかかわる研修の実施が必要と訴えました。またその際には、重篤なアレルギー児がいる学校では専門医が出向く研修が効果的と思われること、また大規模な研修では、学校の対応を決定する管理職、研修意欲が高いにもかかわらず、その機会が少ない一般教諭の参加を重視することを提案しました。

登壇者全員でシンポジウムも

登壇者全員でシンポジウムも

■関係者の“連携”で支える大阪狭山市の取り組み

関係者の“連携”で支える大阪狭山市の取り組みの報告では、保護者の訴えが発端となった連携の広がりを紹介しました。ここでは、保護者と連携した「母の会」の提案を快く受け入れていただいて実現した、アレルギー専門医が担当し教職員が適切な理解を深める学校での研修に、教育委員会や救急救命士など関係者が一堂に会した研修会の実施が連携の広がりを後押し、今では保育士や幼稚園教諭、管理栄養士、保健センター職員など多くの立場の方々向けの研修が行われている様子を紹介しました。

こうした取り組みの背景には、平成21年7月に文部科学省から全国の学校に出された「エピペンを処方されている児童生徒が在籍している学校は、保護者の了解を得てその児童生徒の情報を提供するなど、日ごろから消防機関と連携する、エピペンを処方されている児童生徒の救急搬送を依頼する場合、処方されていることを消防機関に伝えること(要旨)」という通知があります。

それに加え大阪狭山市では、(1)保護者が日ごろから学校や教育委員会に、必要な対応を丁寧に伝えていたこと、(2)救急救命士は意識が高く、専門医に学ぶ意欲にあふれていること、(3)教育委員会の皆さんは「子どもたちのために出来ることは何でもやる」という心強い姿勢であること、(4)教育委員会と消防隊は、「顔が見える」関係で連携がスムースなこと、(5)教委・救急隊の連携は、専門医が“要”にいることで求心力を増している、つまり“心熱い”方々がいることを報告しました。

喘息を乗り越えて金メダル、清水宏保さん

喘息を乗り越えて金メダル、清水宏保さん

発表の最後には、市消防本部消防長の「医療機関、教員、消防職員の連携体制を構築することが第一歩であり、やがて地域が一体となって、救急車の到着を待たずにエピペンが使用できる環境整備に努めたい」と語ってくれていることを紹介し、地域の連携で子どもたちを支える取り組みが少しずつですが始まっていることを報告、こうした取り組みが全国各地に広まっていくことを願っていると訴えました。

■五輪金メダリスト、清水宏保さんも登場

学会では、ほかにもユニークな企画がありました。その中のひとつ、「アスリートと喘息」のセッションでは、「ぜんそくでも、何だってできる! ~ぜんそくのこどもたちの夢を応援します~」と題した、「母の会」顧問である西間三馨先生(国立病院機構福岡病院)と、長野五輪スピードスケートの金メダリスト、清水宏保さんの対談も行われ、清水さんは「重症の喘息でも吸入ステロイドを中心にした適切な医療と自己管理で過酷な競技にも十分に立ち向かえる」と話し、招待された喘息の子どもたちの心に希望の灯をともしました。

■各地の患者さんとも交流を深める

今回の学会でも多くの患者さんとの出会いがありました。その患者さんたちで会場の一角を借り、さまざまな情報交換ができたことも楽しいひと時。今回の研鑽を糧に、さらに地道な活動を続けていこうと熱意に燃えて、それぞれの地元に帰っていきました。

会場の一角で各地の患者さんと情報交換も

会場の一角で各地の患者さんと情報交換も