2012年4月6日
東日本大震災の被災地での活動(その2)
■「支援する立場の人」も被災していた
この3回の被災地訪問では、「支援する立場の人も被災している」という、忘れてはいけないことにも気付かされました。「発災時は、保健師も栄養士もバラバラに避難所生活を余儀なくされ、何の情報もない中で、自分が知っている限り、できる限りの対応を行った。ただ、食物アレルギー児の支援まで思いが及ばなかった」と、自らも被災したある保健師さんは率直に語ってくれました。また三陸沿岸の自治体で出会った多くの専門職の方々は、避難所で暮らしながら被災者を支援する活動を続けていました。
そんな中、避難所にいる食物アレルギーの患者を把握し、食材を届けていた宮城県石巻市の栄養士さんに出会いました。この栄養士さんは、日頃から災害時には高齢者、障害のある人、食物アレルギーの人の支援が必要だと感じ、今回の震災でも、簡単な調査用紙を避難所に配布して、必要な人に食物アレルギー用の食材を届けてくれていました。そして「困っているお母さん方が少しでも楽になれるよう祈っている。これからも応援していきたい」と語ってくれました。
この訪問の後、「健診の時に配布したい」など、追加の資料提供の要請が相次ぎ、「直ぐに必要な対応」と考えた適切な情報の提供は、大変に喜ばれました。
■被災地での活動の重点を見直し
4回の被災地訪問で沿岸地域を一巡したことを受け、以後の活動の在り方の再検討を行いました。その結果、訪問した21市町の教育委員会、保育や健診の担当者60人以上、現地の医師との意見交換を通して、当初「母の会」
が考えた自治体や学校などと連携して行う「呼吸機能検査」などは、被災により自治体の機能が低下、学校などにも余力がなく実施できる状況ではない、また派遣を予定した専門医から肺機能検査や患者啓発の講演会を行うだけでは、地元主治医との関係悪化を招きかねないなどの指摘を受け、当面は、被災地域のニーズに合わせた教育委員会、保育や健診の担当者などへの情報提供、医師・看護士・保健師・栄養士・教員などへの研修機会の提供に重点を置くことにしました。
<3>東京都から「母の会」に意見交換の要請
9月29日、東京都の防災・備蓄担当者からの要請を受け、意見交換を行いました。席上、「母の会」からは、被災地で患児(者)が直面した課題を報告、併せて食物アレルギーの正しい理解に基づく対応を要望するとともに、具体的に、災害発生直後の対応を担う行政として、乳アレルギー対応ミルク、アルファー化米を重点に備蓄してほしい。また「どこ」に「何が(原材料の表示も含め)」備蓄されているか、「問い合わせ先」の情報を、誰にも分かるように、HPや広報誌などで普段から周知してほしいことなどを要望しました。
<4>18市町に“後方支援”の研修を案内
活動内容の見直しを受けた5回目の訪問(11月13日~18日)では、岩手県宮古市から沿岸を南下、宮城県山元町まで18市町の教育委員会・保育・健診担当部門50ヵ所以上を再訪、ニーズに合わせた“後方支援”の活動、具体的には看護師、保健師、栄養士、教職員などを対象としたアレルギー専門医による研修機会を提供する案内を手渡しました。
またこの訪問では、宮城県立こども病院の三浦克志先生から託されたアンケート用紙を三陸沿岸の18市町に届け、協力をお願いしました。